与えられた2つの不等式は、次のように変形できる: \begin{align} xy &\lt z \lt xy+1 \\ x^2+y^2+2xy &\lt z \lt x^2+y^2+xy \end{align} 任意の $x,y$ について1つ目の不等式を満たす $z$ が存在する。 2つ目の不等式を満たす $z$ が存在する条件は $xy \lt 0$ である。 上の連立不等式を満たす $z$ が存在するためには、 \begin{align} xy &\lt x^2+y^2+xy \\ x^2+y^2+2xy &\lt xy+1 \end{align} も必要であるが、前者は $(x,y) \neq (0,0)$ を意味し、 後者は $x^2+y^2+xy \lt 1$ を意味する。 まとめると、求める不等式は \begin{align} xy \lt 0 , \ \ x^2+y^2+xy \lt 1 \end{align} である。
$xy \lt 0$ は、xy平面の第2象限と第4象限を表す。
$x^2+y^2+xy \lt 1$ は、原点を中心とし、 直線 $y=-x$ 上に長軸があり、直線 $y=x$ 上に短軸があり、 長径が $\sqrt{2}$ であり、短径が $\sqrt{2/3}$ であるような楕円である。 なぜなら、 \begin{align} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} &= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} \end{align} とすると、 \begin{align} x^2 + y^2 + xy &= \frac{1}{2} x'^2 + \frac{3}{2} y'^2 \\ &= \frac{x'^2}{2} + \frac{y'^2}{\frac{2}{3}} \end{align} となるからである。
$\Omega$ の境界のうち、 x 軸上にあるのは $(-1,0)$ と $(1,0)$ を結ぶ線分であり、 y 軸上にあるのは $(0,-1)$ と $(0,1)$ を結ぶ線分である。
(2) で考えた $(x,y)$ と $(x',y')$ の対応に加えて、 \begin{align} x' = \sqrt{2} x'' , \ \ y' = \sqrt{\frac{2}{3}} y'' \end{align} を考えると、 \begin{align} x^2 + y^2 + xy &= \frac{x'^2}{2} + \frac{y'^2}{\frac{2}{3}} \\ &= x''^2 + y''^2 \end{align} となる。 これは、楕円 $x^2+y^2+xy=1$ の最も曲率の高い点(の1つ) $(x,y)=(1/\sqrt{3}, -1/\sqrt{3})$ と 単位円 $x''^2+y''^2=1$ 上の点 $(x'',y'')=(1,0)$ を対応付ける。 よって、求める線形変換行列 $X$ は、 \begin{align} X &= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \sqrt{2} & 0 \\ 0 & \sqrt{\frac{2}{3}} \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} 1 & \frac{1}{\sqrt{3}} \\ -1 & \frac{2}{\sqrt{3}} \end{pmatrix} \end{align} とすればよい。
\begin{align} \det X = \frac{2}{\sqrt{3}} \end{align}
\begin{align} X^{-1} &= \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ \sqrt{3} & \sqrt{3} \end{pmatrix} \end{align} なので、 $(x,y)=(1,0)$ に対応するのは $(x'',y'')=(1/2, \sqrt{3}/2)$ である。 つまり、 $\Omega$ に対応するのは単位円の内部の $2/3$ である。 よって、 $\Omega$ の面積は \begin{align} \pi \cdot \frac{2}{3} \cdot \frac{2}{\sqrt{3}} = \frac{4 \pi}{3 \sqrt{3}} \end{align}